40歳から凡人として生きるための文学入門

「こんなはずじゃなかった」「本気出すタイミングが」
「何者にもなれていない」……そりゃおおいに結構! 
凡人を自負する文学研究者による、屈託ない凡人の生活と意見。
凡人だからこそ滋味深い文学の、人生を生きるための知恵が
あなたを待っている。

■目次
まえがき
1 私という凡人 について
この世は生きにくい―凡人であればあるほど/凡人は「影響力が皆無のまま一生を終える人」のこと⁈/凡人への一歩は四十歳を過ぎてから/凡人であることを受け入れる覚悟/私という「ブレない凡人」/両極端な両親(ともに凡人)/「分相応に生きろ」―凡人主義者の母/「凡人こそ努力すべき」―努力主義者の父/意地で英語の本を読み続けた青年時代/凡庸さの厚みが増していく―四十代、凡人の目覚め/老いたらみな凡人
2 カズオ・イシグロの面白さ―凡人だから分かること
カズオ・イシグロの作品から凡人について考える/イシグロの非凡な経歴/非凡人を凡人に格下げするイシグロの小説/「ささやかな満足感」―『生きる LIVING』のメッセ―ジ/いじわるなイシグロ/イシグロの作品の理屈/他者の評価よりも自分の満足感を―凡人へのメッセ―ジ/なぜイシグロの文学に惹かれるのか―『浮世の画家』を読んで/イシグロの超越的視座/変わり続ける時代の趨勢/浮世の世界は乗り越えられるか/イシグロのパラドックス/超越志向を避ける態度―凡人へのメッセ―ジ
3 読書感想文―凡人だからこそ本を読んで考える
山本七平『日本人の人生観』を読んで思うこと/ジェ―ン・E・ハリソン『古代芸術と祭式』から芸術のことを考える/イアン・マキュ―アン『土曜日』は気に入らない
4 平凡な読者のための文学の読み方
文学の授業はなぜつまらないのか/文学を文学の言葉で教えることはむずかしい/自分の書いた論文を学生に読ませてみる/文学を語る言葉について/凡人の不幸―非凡な著作を読んでも非凡になれない/凡人の生き方は凡人から学ぶしかない/ソポクレスの『オイディプス王』―凡人にはこう読める/モ―ム『人間のしがらみ』―凡人のためになる小説/凡人に分かる人生の無意味さこそ文学の入り口
5 平凡な文学研究者のメモ書き
研究テ―マは発酵するのを待つ/問いを立てるとはどういうことか―他人の問い、自分の問い/文学とは? 文学を読むとはどういうことか?
6 文化と凡人―文化、文学、人生と意味付与の関係を考察する
文化とは何か/神、言葉、文化―人間の意味付与が生み出したもの/戦争―無意味な人間同士の無意味な争い/文化は普遍でなく、個別のものである/「言葉ありき」でなく「意味はない」から文化は始まる/人文学―超越的な意味付与でできた学問/文学は人間を映す鏡である/意味と無意味―文化、文学の基底にある二つの命題/個人の感情と想像力/文学研究の意義―作者と読者のコミュニケ―ションを記述する/意味付与の相対化―異なる文化を旅すること/人生と意味付与―E・D・クレムケの場合/人生の意味付けは個人の領分である/開き直りこそ凡人の生き方の極意
あとがき

「雪女」、百年の伝承

雪女伝説はラフカディオ・ハーン『怪談』から生まれた。
わずか100年あまりの「民話」の変遷を、ハーン研究者が丹念に辿る。

「雪女」は、本来、英語圏読者のために英語で創作された近代的な短編小説だったのだが、いくつかの翻訳と翻案を経るうちに、いつしか日本固有の伝説として地方に根づき、口碑として語りつがれ、ついには、昔話・民話として人々の間に記憶されるようになった。その、言語・ジャンル・メディアの境界を横断するさまは、二十世紀という越境の時代にあっても異様に感じられるのだが、…… (本文より)

籾山仁三郎〈梓月〉伝

江戸の粋を胸に、実業と文学に生きたディレッタント
胡蝶本や「文明」の版元として明治・大正期に足跡を残す籾山書店。
虚子から「ホトトギス」を引き継いだその人は、荷風の生涯の友であり、鷗外を敬愛し、漱石を痛罵した……

籾山は江戸から続く飛脚問屋の三男坊として生まれるが、その実家は継がず、婿入りした海産物問屋も継がず、出版業を生業とする実業を開始する。籾山にとってはまず生業が重要であり、文芸を余技と位置づけられている。籾山は経済に対する関心も強かったが、これまで採りあげられる機会は無かった。本書は、〈生業と余技〉という観点から籾山の遺業を捉え直す試みである。

籾山仁三郎(にさぶろう)、俳号梓月(しげつ)は、現在、文芸評論家あるいは装幀美術に関心のある美術評論家に、俳人、出版人として言及されることはあるが、その機会は稀である。これまで籾山は、永井荷風の陰に佇む人物として位置づけられてきた。荷風より丸二年先に生まれた籾山(明治11年1月生)は、荷風より丸一年先に逝く(昭和33年4月2歿)。

目次
叙 
  第一章 日本橋っ子・籾山仁三郎
 第一節 飛脚問屋に生まれた日本橋っ子  
 第二節 俳諧との縁 
   第三節 藤沢・耕餘義塾での文芸教育 
   第四節 三田・慶應義塾での経済教育  
第二章 日本橋から築地へ
 第一節 海産物問屋・籾山家へ入婿  
 第二節 築地籾山別邸での暮らし  
 第三節 籾山の親族と転居 
  第三章 生業〈出版社経営〉
 第一節 俳書堂の出版活動 
   第二節 籾山書店の創設と多領域の出版活動  
 第三節 籾山書店の変遷―築地から銀座・丸の内へ― 
  第四章 余裕の余技と多彩な趣味
 第一節 童話作家:丹羽五郎 
   第二節 散文集『遅日』の評価  
 第三節 多彩な趣味 
  第五章 余技〈俳諧文芸〉
 第一節 連句再評価『連句入門』の刊行  
 第二節 句集『江戸庵句集』『冬うぐひす』  
 第三節 「校訂餘言」という文芸  
 第四節 多様な文体―尺牘文・和文―  
第六章 生業〈雑誌の編集・販売〉と余技〈寄稿〉
 第一節 『三田文学』
 第二節 『文明』
    第三節 『俳諧雑誌』 
   第四節 『春泥』など 
  第七章 三文豪〈荷風・鷗外・漱石〉に向かう姿勢
 第一節 生涯の友・荷風  
 第二節 鷗外への畏敬 
   第三節 漱石を痛罵 
  第八章 先達と後継
 第一節 籾山の先達  
 第二節 籾山の後継Ⅰ〈商人系〉  
第九章 生業〈会社員〉と余技〈俳諧〉
 第一節 時事新報社役員・籾山仁三郎  
 第二節 病床での句集『鎌倉日記 伊香保日記』『浅草川 冬の日』  
 第三節 籾山の後継Ⅱ〈会社員系〉  
第十章 告別
 第一節 籾山の後継Ⅲ〈門弟・田島柏葉〉
 第二節 独吟歌仙『古反故』と最後の句集『冬扇』 
  終章 追 悼  
跋  
籾山仁三郎 年譜 


修正・増補のお知らせ
記述に不正確な点がありましたので、以下、修正、増補いたします。

75頁後ろから2行目
【誤】原作二作をつなぎ合わせつつも基本構成は変えずに、
【正】『Alice’s Adventures in Wonderland』の基本構成は変えずに、

77頁後ろから5行目「永代静雄『アリス物語』紅葉堂書店 大正元年十二月」
の後に
(初出は『少女の友』創刊号(明治41年2月)より断続的に連載。但し永代の創作も混在している。)
を加える。

ハンセン病最初の女性医師服部ケサ

第46回福島民報出版文化賞受賞作
ハンセン病者への偏見と差別があり、女性が医師になるのが困難であった大正時代に、ハンセン病者に尽くした女性医師。遺された日記を中心とした原資料を丹念にあたり、現地への取材を重ねた著者の集大成。「女性史、ハンセン病を研究されている方々に読んでほしいんのです」(著者)。

服部ケサとは】
1884年、福島県岩瀬郡須賀川村(現在の須賀川市)生まれ。
1905年、東京女医学校に入学し、当時の医師制度が変更されるなか、女性医師への道が限られるなか、1914年に医師免許取得。女医の就職先が少ないなか、三井慈善病院に看護師として勤務する。この病院で、看護師の三上千代と出会い、キリスト者となる。
1917年、イギリス人女性宣教師コンウォール・リーと三上に乞われ、ハンセン病者が集落をつくっていた群馬県草津に向かい。翌年発足した聖バルナバ医院で医師として働く。
1924年、持病の心臓病が悪化する中、三上とともに聖バルナバ医院を退職。新居を「鈴蘭医院」とするも、同年11月22日、心臓麻痺のため亡くなった。
1932年、聖バルナバ医院、鈴蘭医院の近くに、国立療養所栗生楽泉園が設立される。

中野トク小伝

なぜ寺山修司は、基地の町の中学教師に、75通もの手紙を書き送ったのか。

病床にあった〈才能〉を、物心ともに支えた女性の戦中戦後。
町の歴史をたどりながら記す、二人の交感。

ZOOMに背を向けた大学教授

団塊の世代が直面したパンデミック。
パソコン操作に四苦八苦、変換ミスを繰り返し、ついには心労のため強制入院。
四国の実家に帰った学生もいれば、休学、音信不通となった学生、入国できない留学生も。
コロナ禍で自問した「大学の意義」とは。

本日は都合により、ここまで。パソコンの不具合、発生。
私に出来ることは、メールの送受信と、文字だけの原稿作成……。

昭和史の本棚

『永遠の0』への不審、『昭和天皇実録』編纂者の誘導
著者初のブックガイド。197冊を評する。

昭和の軍人が単調で思い込みが激しく、自制や自省にかけていたのは、読書量が少なかったからである。感性が育つと面倒との理由で、軍人教育ではむしろ一般書や教養書を読むなと厳命されていた。逆に、本をよく読んだタイプは戦争に消極的で、その終焉に努力した。これは歴史的事実で、記憶しておくべき点である。(序章 私の書評論 より)

航路を守れ

市場のから騒ぎに振り回されず、自分のなすべき仕事をなせ

世界を一変させた「インデックス・ファンドの父」が最後に書き遺した、苦難の歴史と揺るぎなき信念。


「長期・分散・低コスト」をコンセプトに昨今、日本でも急激に広まりつつあるインデックス投資。 史上初めてそれを個人向けに提供し、現在6.3兆ドルの資産を運用する世界最大級の投資会社バンガード・グループ。 しかしその成功は、ある大失敗から始まり、数々の逆境を経て得られたものだった。 バンガード創設者ボーグルはどのようにして困難を乗り越え、業界に革命を起してきたのか?  彼がどうしても書き遺しておきたかった、人生で本当に大切なこと。
投資会社バンガード創設者ボーグルはどのようにして困難を乗り越え、業界に革命を起してきたのか? 投資において大切なこととは。

電子書籍版もあります。
紀伊國屋書店
honto
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ほか取扱電子書店でお求めいただけます。

本書初版第一刷(2021年2月11日発行)の表記に誤りがございました。担当編集のミスとしてお詫びいたします。
・p59 【誤】私の留まった。→【正】私の目に留まった。
・第4章~第9章の各扉頁裏の表 【誤】株式60%/債権40%→【正】株式60%/債40%
・著者略歴 【誤】1929年3月8日生まれ→【正】1929年5月8日

絵画の運命

モデル、モチーフ、時代背景、保護、競売のシステム、メディアの批評など、「美」を取り巻く人々の眼差しがつくった「歴史」 政治や経済、そして戦争における権謀に巻き込まれて国境を越え、流転を重ねた傑作がある。 その、カンバスの裏に隠された履歴を追う。

本文中、誤りがありましたので、訂正します。83頁終りから3行目
【誤】下山観山
【正】下村観山
増刷となりましたら、修正します。

もう一つ上の日本史 古代~近世篇

教科書のほうがこんなに面白い
蔓延する俗説・デマ・ヘイト。 そのカラクリを、現役歴史教師が、豊富な資料でやさしく解説。騙されないための、歴史リテラシーの基本。

電子書籍版もあります。
紀伊國屋書店
honto
BOOK☆WALKER
BookLive
Amazon.co.jp
Apple Books
ほか取扱電子書店でお求めいただけます。

本書の「はじめに」をnoteで公開しています。
本書初版第一刷(2020年3月10日発行)の表記に誤りがございました。担当編集のミスとしてお詫びいたします。こちらで正誤表を公開しています

卑弥呼、衆を惑わす

「万世一系」を皇統を支えた「集合的無意識」とは 天孫降臨から昭和の敗戦を貫き、そして現在の「象徴」を見据えた日本通史。

線量計と奥の細道

「3.11」後の日本がどうなっているか、目と耳と足で確かめた路上の記録。現実と向き合いながらも逡巡し、生きるということを考えた日々。 第67回日本エッセイスト・クラブ賞</>受賞作品

老いぼれ記者魂

女子学生はなぜ「強姦」を訴えたのか。 派閥争いや「地上げの帝王」が絡み、地位も名誉も信用も家庭も失った男は、死ぬまで「冤罪」を晴らそうとした。 有罪か無罪か その解答に執念を燃やしつづけた、大宅壮一ノンフィクション賞作家の渾身の書き下ろし。

ホルトの木の下で

作品だけでなく、その生き方も支持される孤高の日本画家の自伝。百歳を前に、1950から80年代に発表したエッセイ10篇を増補した新版。

ことばだけでは伝わらない

「見た目」や「伝え方」だけではない7つの要素 「伝え合い」という考え方で、言語(バーバル)と非言語(ノンバーバル)の働きを総合的に捉える。世界各地の言語に親しんだ文化人類学者による、本質的なコミュニケーション論

帝都公園物語

明治期東京の公園誕生ものがたり 日比谷公園、新宿御苑、明治神宮(外苑)など、カルチャーギャップと大格闘して生まれた開発すったもんだの明治秘史。『『痴人の愛』を歩く』の著者が放つ東京文化論。

花森安治の従軍手帖

「国民の一人先づ動かずして何ぞ万の、億の国民動かんや。これ宣伝者の信念なり。」花森安治が二度の従軍と大政翼賛会宣伝部時代に書き残した手帖5冊・書簡など13点を、150余点の図版とともに収録。回想談:土井藍生、解説:馬場マコト

ナショナリズムの昭和

左翼的偏見や右翼的独善からの解放 天皇制とは何か。国のあるべき姿とは何か。戦前と戦後の国家像を検証し、後世に受け継ぐべき理念を探る1500枚、ついに刊行!

虹の橋を渡りたい

女とマスコミがしっかりしていれば戦争は防げる! この国の100年の激動を見てきたからこそ、言い残しておきたいこと。長年の交流を持つノンフィクション作家が丹念な取材で、いまなお創作活動を続ける画家の足跡をたどる、決定版評伝。