抒情の変容

時代を越えて浮かび上がる抒情の多面性

ボードレール、バンヴィル、ユゴー、ルヴェルディ、フォラン、レダ、エマーズら19世紀から21世紀までのフランス近現代詩をめぐり、「抒情詩(poésie lyrique)」「抒情性(lyrisme)」「抒情主体(sujet lyrique)」の三つの詩学概念を問う、フランス文学研究者6名の論考がひびきあうフランス抒情詩論集。

鳥たちのフランス文学

鳥はもはや〈人間にとって手が届きそうで届かない存在〉なのだろうか。

18世紀の自然誌から、デボルド゠ヴァルモール、ジョルジュ・サンド、バルザック、ヴェルヌ、ビュトール、プルースト、ルーセル、ブルトン、ボヌフォワ、マリー・ンディアイまで――18世紀から21世紀にいたるフランス文学の世界を飛び翔る鳥たちの姿を渉猟、精読する。


寄稿者
中村英俊
岡部杏子
博多かおる
石橋正孝
福田桃子
新島進
前之園望
三枝大修
笠間直穂子

ガリバー

『フランドルへの道』『ファルサロスの戦い』『農耕詩』など、前衛的、実験的小説作品を発表した〈ヌーヴォー・ロマン〉の代表作家クロード・シモン――シモン独自の書法で紡がれた、第二次大戦末期の、とある日曜日の出来事の〈居場所のなさ〉をめぐる初期の長編小説。本邦初訳。

戦争

20世紀のスキャンダル作家セリーヌの死後60年の時を経て発見され、「21世紀の文学史的事件」と国内外で話題を呼んだ幻の草稿群のひとつ、『戦争』――『夜の果てへの旅』に続いて執筆された未発表作品にして、第一次大戦下の剥き出しの生を錯乱の文体で描き出した自伝的戦争小説が本邦初訳で登場!https://www.genki-shobou.co.jp/wp-admin/upload.php

稜線の路

人間に潜む根源的欺瞞を暴き出し、非現実を現実に変えてしまう秩序転倒の現代を告発し、在るべき世界秩序を啓示する――『形而上学日記』の哲学者・劇作家ガブリエル・マルセルの哲学思想を先導する〈筋書きの無い演劇〉にして、マルセル戯曲作品の頂点を極めた全四幕の悲劇。本邦初訳。

モン=オリオル

レジャーと治療、自然のスペクタクル、社交と娯楽、投機と事業、源泉所有権をめぐる資本所有者たちのたくらみと諍い、恋愛と姦通――温泉リゾート「モン゠オリオル」を舞台に種々様々な人間たちの「感情」が絡み合う、モーパッサンが描く一大〈人間喜劇〉。

訳者解題の一部をnoteで公開しています。

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昼と夜 絶対の愛

アポリネール、ブルトン、レーモン・クノー、イヨネスコ、ボリス・ヴィアンら20世紀フランスの前衛作家たちに多大な影響を与えた、不条理の作家アルフレッド・ジャリ――兵役体験における生と存在を夢幻的に描く『昼と夜』、催眠術によって新しい世界を創造しようとする『絶対の愛』の小説2篇を収録。

シャーンドル・マーチャーシュ 地中海の冒険  〈上・下〉

ハンガリー独立運動の道半ばにして斃れた仲間たちから「裁き」の使命を託されたシャーンドル・マーチャーシュ伯爵。果たして彼は、奸智に長けた仇敵たちを捕らえることができるのか? 
悪党どもに正義の鉄槌を下さんとして、神出鬼没の謎多き医師アンテキルト博士とその仲間たちが地中海を舞台に躍動する。
『海底二万里』『八十日間世界一周』を凌駕し、ジュール・ヴェルヌの小説シリーズ〈驚異の旅〉の中でも最大級のスケールを誇る、狂瀾怒濤の海洋冒険物語。上巻は、全五部のうち第三部第四章までを収録。下巻は、第三部第五章から第五部最終章までを収録。エッツェル版挿絵全点を掲載した新訳決定版。

レペルトワール Ⅲ

騙し絵か非゠騙し絵か(ホルバイン、カラヴァッジョ)、小説の地理学(ルソー)とポルノグラフィ(ディドロ)、毒薬/霊薬としての言葉(ユゴー)、連作としての絵画と文学(北斎、バルザック、モネ)、キュビスムの技法(ピカソ、アポリネール)、「正方形とその住人」(モンドリアン)、記憶の多角形(ブルトン)、「宇宙から来た色」(M・ロスコ)、考古学、場所、オペラ等々、文芸×美術を自在に旋回する、アクロバティックな創作゠批評の饗宴。

■目次
批評と発明
考古学について
場所
細かく見た一枚の絵
アンブロジアーナ絵画館の《籠》
世界の果ての島
運命論者ディドロとその主人たち
富嶽三十六および十景
「地方のパリジャンたち」
闇から出る声と壁をとおして滲み出る毒
インクの芽生え
クロード・モネあるいは反転された世界
子どもの頃の読書
絵画の間の連続性
アポリネールのための無の記念碑
正方形とその住人
七面体ヘリオトロープ
ニューヨークのモスクまたはマーク・ロスコの芸術
ヘラクレスの視線のもとで
オペラすなわち演劇
文学、耳と目

 註
 初出一覧
 解題───石橋正孝

聖ヒエロニュムスの加護のもとに

ジョイス、ホイットマン、バトラーら英米文学から中南米文学、伊文学まで〈世界文学の仲介者〉として多言語の文芸を翻訳したコスモポリタン作家ヴァレリー・ラルボー──聖ヒエロニュムスの論考を筆頭に、500余名の文人をめぐり翻訳の理念、原理、技法がエッセイで説き明かされる翻訳論の白眉。本邦初訳。

三つの物語

ナポレオンとの政治的対立から追放されながら、個人の自由と寛容を重んじ、政治的リベラリズムを貫き通したスタール夫人――奴隷制度廃止宣言の翌年に刊行された、三角貿易の拠点セネガル、アンティル諸島、ル・アーヴルを舞台にした三人のヒロインたちによる「愛と死」の理想を描く中編小説集。本邦初訳。

目次
1795年の序文
三つの物語
 ミルザ、あるいは、ある菱光社の手紙
アデライードとテオドール
ポーリーヌの物語

スタール夫人年譜
訳者解題

原タイトル:Trois Nouvelles

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運河の家 人殺し

〈メグレ警視〉シリーズの作家が、人間であることの病いをどこまでも灰色に、〝イヤミス〟以上にほろ苦く描く——シムノン初期の、「純文学」志向の〈硬い小説〉の傑作2篇がついに本邦初訳で登場! シムノン研究家の顔をもつ小説家・瀨名秀明による、決定版シムノン「解説」を収録。

彼は疲れはて、眠りこんだが、激しい頭痛で目が覚めてしまった。強迫性のものだった。自らを取り巻くこの単調さ(グリザイユ)、空虚、無気力からどう抜け出したらいいかわからなかった。こうした生気のないところで、彼の人生は希薄になった空気中の炎のように燃えつきようとしていた。

レペルトワール Ⅱ

書物はモビールでなくてはならない。それも、他のすべての書物の運動(モビール)性をめざめさせるモビール、他の書物の火をかき立てるような炎(ほむら)であるべきだ。

「長編小説(ロマン)と詩」を筆頭に、長編小説をめぐる原論的考察を中心とする前半の理論篇、ラブレー、セルバンテス、ラクロ、シャトーブリアン、バルザック、ユゴー、マラルメ、プルースト、そしてビュトール自身を対象とするモノグラフィからなる後半の応用篇という二連画(ディプティック)が、いつしか長編小説(ロマン)の似姿となり、みずからを超克していく――小説を超える小説(シュルロマン)としての文芸批評、ここに開幕!

修繕屋マルゴ 他二篇

偽善社会をこき下ろし、ディドロに「心臓に毛が生えている」と評された、人相不明の諷刺作家フジュレ・ド・モンブロン――エロティックな妖精物語『深紅のソファー』と遊女の成り上がりの物語『修繕屋マルゴ』、奔放不羈な旅人の紀行文学『コスモポリット(世界市民)』を収録。

部屋をめぐる旅 他二篇

フランス革命の只中、18世紀末のトリノで、世界周游の向こうを張って42日間の室内旅行を敢行、蟄居文学の嚆矢となったグザヴィエ・ド・メーストル「部屋をめぐる旅」――その続編「部屋をめぐる夜の遠征」、および「アオスタ市の癩病者」の小説3篇と、批評家サント゠ブーヴによる小伝を収録。

■収録作
部屋をめぐる旅
部屋をめぐる夜の遠征
アオスタ市の癩病者

魂の不滅なる白い砂漠 詩と詩論 

シュルレアリスムの先駆的存在と知らしめた〈イマージュ〉から孤高の存在へと歩を進めた詩人ルヴェルディ――初期から晩年に至る30篇の「詩」、本邦初訳「詩と呼ばれるこの情動」他「詩論」4篇、E・グリッサンのルヴェルディ論を付したルヴェルディ詩学の核心に迫る精選作品集。 訳者による本書の解題(抜粋)はnoteで公開しています。

レペルトワール I

「彼(ビュトール)の言葉が達する領域は、バルトやリシャ―ルのそれに比較して、はるかに広く、いつか、思いもかけぬ時期に、モビールのようなフランス文学史ができあがっているかもしれない。」【蓮實重彥「バルト・リシャ―ル・ビュトール」より】

フランス文学史に聳え立つ20世紀フランス文芸批評の金字塔、全5巻発刊!
「ビュトール宇宙」の集大成となる評論集、日本初の完訳版。

三つの庵

みずからの住まい、佇まいの中心に
文学という名の宇宙が存在する。

H・D・ソロー、パティニール、芭蕉
孤高なるユートピアンの芸術家たちがこしらえた「庵」の神秘をめぐる随想の書。
世界中のすべての隠遁者におくる《仮住まいの哲学》、
孤独な散歩者のための《風景》のレッスン。

ソロー(『ウォールデン 森の生活』)「ウォールデンの小屋は働かない者の住まいでもなければ、働き者の住まいでもない。」
パティニール(15-16世紀フランドルの画家)「パティニールは空の青を、彼の小屋を見せてくれた。物ではなく、深く穿たれたヴィジョンを。万物の隠れ棲むさまを。」
芭蕉「たしかに芭蕉は「地の果て」に憧れてはいたものの、彼が旅から学んだのは、どんな境界であれ、結局は私たちが今いる場所を通過するという事実だった。その教えは絶対である。だから、旅路の果てに行き着くには、仮小屋を作るだけで十分なのだ。」

原著:Christian DOUMENT TROIS HUTTES, Éditions Fata Morgana,2010

子供時代

原書名:Nathalie SARROUTE:”ENFANCE” ヌーヴォー・ロマン作家サロートが到達した、伝記でも回想でもない、まったく新しい「反-自伝小説」。「私」とあなた」の対話ではじまる、言葉とイマージュと記憶の物語。サロート円熟期の実験作、遂に邦訳刊行。サロート作品の日本語訳は実に44年ふり。

呪われた詩人たち

コルビエール、ランボー、マラルメらを世に知らしめ、同時代人の蒙を開き、時代におおきな影響をもたらした評論の、初の原著からの完全日本語訳。 訳者(倉方健作)の解題はnoteで公開しています。 本書と同時刊のコルビエール『アムール・ジョーヌ』(小澤真・訳)刊行記念対談もnoteで、前編後編と2回にわけて、公開しています。