作家、作品を精確に捉えて〈肖像〉として描出し、詩や小説とならぶ文学ジャンルとしての「批評」を確立した、近代批評の父サント゠ブーヴ――バルザック、ユゴー、ノディエ、シャトーブリアン、サン゠シモン、スタンダール、ボードレールらをめぐる九つのフランス文学評論を精選。
童貞喪失、人文学史上で黙殺されてきた恋愛不要の結婚、そして死。
ヴォルテールの執拗な攻撃、ヴァラン夫人とドゥドト夫人への想い。
精神分析とポストモダンの泥沼にまみれたルソーを救い出し、
未だ多く残る君主制を廃棄する手がかりとして、その思考を追う。
書き下ろし論考
復権する「ウクライナ文化」
その実践のダイナミズムを捉え
ウクライナの国民意識の核心に迫る!
22名の論者による学際的考察が明かすウクライナ文化の真相
ロシアとヨーロッパのはざまで引き裂かれ、複雑な歴史形成を余儀なくされてきた国ウクライナ――民俗、習慣、言語活動、文学、音楽、芸術の諸領域におよぶウクライナの文化実践の動向を学際的に考察。「ロシア世界」からの解放へと向かうウクライナ文化の最前線を総展望する、本格的なウクライナ文化論集。
【目次】
序 章 (赤尾光春)
第一部 「ロシア世界」との決別
第一章 故郷(ホーム)の境界を拡大する――私たちすべてのための物語(ヴィクトリア・アメーリナ/作家)
第二章 帝国主義、覇権、ロシアのウクライナ侵攻(クセニア・オクサミトナ/国際政治学)
第三章 「どこにもいない国民」を地図化する――「帝国的知」の有害な魔力と脱植民地化の課題(ミコラ・リャブチュク/ウクライナ政治)
コラム① ドイツ占領下のウクライナをめぐる日本の報道――一九四一年六月~十月(池田嘉郎/近現代ロシア史研究)
第二部 ウクライナ文化の源流を辿る
第四章 ザスラーウシケィイ公の世界修復論(原真咲/ウクライナ文学)
第五章 ヘチマン国家時代から十九世紀前半におけるウクライナの表象形成と歴史観(大野斉子/ロシア文学・文化)
第六章 言語の禁止に抗して――二つの帝国下におけるウクライナ文化人の連携(イーホル・ダツェンコ/ウクライナ語史・歴史社会言語学
コラム② イワン・コトリャレウシキーの『エネイーダ』――近代ウクライナ文学を切り拓いたパロディ(上村正之/ロシア文学・ウクライナ文学)
第三部 芸術に見るウクライナ精神の系譜
第七章 歌が織りなす共同体――ウクライナの歴史と民謡の力(オリガ・ホメンコ/歴史・文学・文化)
第八章 ウクライナ映画を立体的に見る――オレフ・センツォフとセルゲイ・ロズニツァを軸として(梶山祐治/旧ソ連諸国および中東欧の映画)
第九章 戦時の美術表現――現代ウクライナ作家の軌跡(鴻野わか菜/ロシア東欧美術・文学・文化)
コラム③ 精神性の継承――『火の馬』『妖婆 死棺の呪い』『ノスタルジア』(沼野恭子/ロシア文学・文化)
第四部 抵抗としての詩作と笑い――戦時下の文芸と娯楽
第十章 影の劇場――戦時下における詩の読解と翻訳(アメリア・グレイザー/ウクライナ、ロシア、イディッシュ文学)
第十一章 戦争を生き抜くための言葉――二〇二二年二月二十四日以降に書かれた詩をめぐって(原田義也)
第十二章 ロシア・ウクライナ戦争と笑い(赤尾光春)
コラム④ ウクライナにおける法令関係データベースの操作性(田上雄大/ウクライナ地域研究・憲法学)
第五部 言語とアイデンティティ――対ロシア戦争とウクライナ「国民」の誕生
第十三章 ロシアによるウクライナ侵攻の言語的背景(池澤匠/スラヴ語学・言語接触・言語表象)
第十四章 言語は戦争と関係があるのか?――ウクライナ東部からの避難民のナラティヴに見る言語とアイデンティティ交渉(ユリヤ・ジャブコ/対照言語学・社会言語学)
第十五章 ウクライナ人とは誰か――侵略を受けて変化するアイデンティティ認識(平野高志/ウクライナ内外政・クリミア問題・ウクライナ語)
コラム⑤ ウクライナ・ディアスポラと共に消えた日本人のウクライナ研究(岡部芳彦/日本ウクライナ交流史)
[特別寄稿❶] ウクライナについて学ぶ――慶應義塾大学での試み(熊野谷葉子/ロシア民俗学)
[特別寄稿❷] 日本の言論空間に「主体としてのウクライナ」を(加藤直樹/東アジアと日本の近現代史)
あとがき――「文化」は何に対して挑戦するのか(原田義也)
ヴィルヘルム・グリム、フケー、C・G・ユングらを魅了し、人心を惑わす「危険な書」として発刊即、発禁となった禁断の書。霊界、幽体離脱、ドッペルゲンガー、テレパシー等々を克明に詳述したユング゠シュティリングの哲学的思索の総決算の書にして、スヴェーデンボリを超える心霊書。本邦初訳。
1920~50年代、アメリカの文芸誌、新聞に160篇をも超える文芸評論や書評を寄せ、〈アメリカにおける最上の女性批評家〉と称されたアイルランド出身の作家メアリー・コラム。
文芸復興運動の渦中にあったダブリンで出会い、文学の〈師〉と仰いだ詩人W・B・イェイツとの友情。英国から独立する契機ともなったイースター蜂起の首領たちとの親交。詩人E・ワイリーやH・クレイン、T・S・エリオットとの交流、パリ滞在で旧交を温めたジェイムズ・ジョイス一家との付き合い……〈人びとのささやかな夢〉を活写し、20世紀初頭のアイルランド文学史を裏書きする文学的自伝・回想録。本邦初訳。
真に革新的なのは、新しいジャンルを生み出すこと、
諸ジャンルのあいだの均衡を攪乱することだ。
文学の優位性を否定し、断片のエクリチュールにより文学の閾を超え、諸芸術の対等性へ。ビュトール流「旅学(イテロロジー)」は、言語からイメージへ、イメージから言語へと自由に行き来しながら創作゠批評を展開する。「絵画のなかの言葉」を皮切りに、絵画の文学性、文学の絵画性を交錯させる、絢爛たる論理の一大円舞。
地域、言語、芸術の境界を攪乱し、
自らの歴史的厚みを開示するヒエログリフ
のような批評が繰り広げられる評論集第四弾!
【目次】
旅とエクリチュール
絵画のなかの言葉
ヴィヨンの韻律法
ヒエログリフとサイコロ
フーリエにおける女性的なもの
螺旋をなす七つの大罪
ボードレール小品(オプスクルム・ボードレリアヌム)
短編映画ロートレアモン
実験小説家エミール・ゾラと青い炎
ジルベール・ル・モーヴェの七人の女 もうひとつの七面体
百頭女の語ること
変容
陰険な者たちのパレード
ちょっとした合図
モデルの深淵で
魅惑する女(ひと)
流行(モード)と現代人(モデルヌ)
臣従の誓い
私の顔について
タイプライター礼賛
今日、あれこれと本をめぐって
1998年の『定本尾崎翠全集』刊行以後、新たに発見された小説“小野町子もの”=「書簡集の一部分」をはじめとする書籍初収録作品の集大成。
かつ『全集』解説の誤りを正す解題、最新版の年譜等も収録。
時代を越えて浮かび上がる抒情の多面性
ボードレール、バンヴィル、ユゴー、ルヴェルディ、フォラン、レダ、エマーズら19世紀から21世紀までのフランス近現代詩をめぐり、「抒情詩(poésie lyrique)」「抒情性(lyrisme)」「抒情主体(sujet lyrique)」の三つの詩学概念を問う、フランス文学研究者6名の論考がひびきあうフランス抒情詩論集。
「こんなはずじゃなかった」「本気出すタイミングが」
「何者にもなれていない」……そりゃおおいに結構!
凡人を自負する文学研究者による、屈託ない凡人の生活と意見。
凡人だからこそ滋味深い文学の、人生を生きるための知恵が
あなたを待っている。
■目次
まえがき
1 私という凡人 について
この世は生きにくい―凡人であればあるほど/凡人は「影響力が皆無のまま一生を終える人」のこと⁈/凡人への一歩は四十歳を過ぎてから/凡人であることを受け入れる覚悟/私という「ブレない凡人」/両極端な両親(ともに凡人)/「分相応に生きろ」―凡人主義者の母/「凡人こそ努力すべき」―努力主義者の父/意地で英語の本を読み続けた青年時代/凡庸さの厚みが増していく―四十代、凡人の目覚め/老いたらみな凡人
2 カズオ・イシグロの面白さ―凡人だから分かること
カズオ・イシグロの作品から凡人について考える/イシグロの非凡な経歴/非凡人を凡人に格下げするイシグロの小説/「ささやかな満足感」―『生きる LIVING』のメッセ―ジ/いじわるなイシグロ/イシグロの作品の理屈/他者の評価よりも自分の満足感を―凡人へのメッセ―ジ/なぜイシグロの文学に惹かれるのか―『浮世の画家』を読んで/イシグロの超越的視座/変わり続ける時代の趨勢/浮世の世界は乗り越えられるか/イシグロのパラドックス/超越志向を避ける態度―凡人へのメッセ―ジ
3 読書感想文―凡人だからこそ本を読んで考える
山本七平『日本人の人生観』を読んで思うこと/ジェ―ン・E・ハリソン『古代芸術と祭式』から芸術のことを考える/イアン・マキュ―アン『土曜日』は気に入らない
4 平凡な読者のための文学の読み方
文学の授業はなぜつまらないのか/文学を文学の言葉で教えることはむずかしい/自分の書いた論文を学生に読ませてみる/文学を語る言葉について/凡人の不幸―非凡な著作を読んでも非凡になれない/凡人の生き方は凡人から学ぶしかない/ソポクレスの『オイディプス王』―凡人にはこう読める/モ―ム『人間のしがらみ』―凡人のためになる小説/凡人に分かる人生の無意味さこそ文学の入り口
5 平凡な文学研究者のメモ書き
研究テ―マは発酵するのを待つ/問いを立てるとはどういうことか―他人の問い、自分の問い/文学とは? 文学を読むとはどういうことか?
6 文化と凡人―文化、文学、人生と意味付与の関係を考察する
文化とは何か/神、言葉、文化―人間の意味付与が生み出したもの/戦争―無意味な人間同士の無意味な争い/文化は普遍でなく、個別のものである/「言葉ありき」でなく「意味はない」から文化は始まる/人文学―超越的な意味付与でできた学問/文学は人間を映す鏡である/意味と無意味―文化、文学の基底にある二つの命題/個人の感情と想像力/文学研究の意義―作者と読者のコミュニケ―ションを記述する/意味付与の相対化―異なる文化を旅すること/人生と意味付与―E・D・クレムケの場合/人生の意味付けは個人の領分である/開き直りこそ凡人の生き方の極意
あとがき
鳥はもはや〈人間にとって手が届きそうで届かない存在〉なのだろうか。
18世紀の自然誌から、デボルド゠ヴァルモール、ジョルジュ・サンド、バルザック、ヴェルヌ、ビュトール、プルースト、ルーセル、ブルトン、ボヌフォワ、マリー・ンディアイまで――18世紀から21世紀にいたるフランス文学の世界を飛び翔る鳥たちの姿を渉猟、精読する。
寄稿者
中村英俊
岡部杏子
博多かおる
石橋正孝
福田桃子
新島進
前之園望
三枝大修
笠間直穂子
革命の担い手「われわれ」が生まれるには、
独りでも行く「われ」が存在しなければならない
日常生活そのものが闘争の場であることを示した作家・大西巨人。
公正の実現を目指し、現実と芸術とを実践的に結びつけた文学者の、類を見ない創作の展開を追跡する。
並走者武井昭夫、湯地朝雄の仕事にも及ぶ、運動としての文学に迫る考察。
巻末に詳細な『神聖喜劇』原稿リスト
発話される日本語、外国人が聴く日本語、よくよく分析してみると、日本語の「あ」の発音は英語のcatのaだったり、cutのuだったり、日常的に使い分けられている。
音声から引き起こされるイメージを、楽しく詩の形で固定していく。詩とは元来、書かれるものではなく口から発せられるものだった。
『米欧回覧実記』でロッキー山脈を落機山と書かれてることから
(本文より)
渡航手段が
船舶でなく航空機であったとしても
この不吉な字面を随行書記は
採用した?
しなかった?
雪女伝説はラフカディオ・ハーン『怪談』から生まれた。
わずか100年あまりの「民話」の変遷を、ハーン研究者が丹念に辿る。
「雪女」は、本来、英語圏読者のために英語で創作された近代的な短編小説だったのだが、いくつかの翻訳と翻案を経るうちに、いつしか日本固有の伝説として地方に根づき、口碑として語りつがれ、ついには、昔話・民話として人々の間に記憶されるようになった。その、言語・ジャンル・メディアの境界を横断するさまは、二十世紀という越境の時代にあっても異様に感じられるのだが、…… (本文より)
騙し絵か非゠騙し絵か(ホルバイン、カラヴァッジョ)、小説の地理学(ルソー)とポルノグラフィ(ディドロ)、毒薬/霊薬としての言葉(ユゴー)、連作としての絵画と文学(北斎、バルザック、モネ)、キュビスムの技法(ピカソ、アポリネール)、「正方形とその住人」(モンドリアン)、記憶の多角形(ブルトン)、「宇宙から来た色」(M・ロスコ)、考古学、場所、オペラ等々、文芸×美術を自在に旋回する、アクロバティックな創作゠批評の饗宴。
■目次
批評と発明
考古学について
場所
細かく見た一枚の絵
アンブロジアーナ絵画館の《籠》
世界の果ての島
運命論者ディドロとその主人たち
富嶽三十六および十景
「地方のパリジャンたち」
闇から出る声と壁をとおして滲み出る毒
インクの芽生え
クロード・モネあるいは反転された世界
子どもの頃の読書
絵画の間の連続性
アポリネールのための無の記念碑
正方形とその住人
七面体ヘリオトロープ
ニューヨークのモスクまたはマーク・ロスコの芸術
ヘラクレスの視線のもとで
オペラすなわち演劇
文学、耳と目
註
初出一覧
解題───石橋正孝
ジョイス、ホイットマン、バトラーら英米文学から中南米文学、伊文学まで〈世界文学の仲介者〉として多言語の文芸を翻訳したコスモポリタン作家ヴァレリー・ラルボー──聖ヒエロニュムスの論考を筆頭に、500余名の文人をめぐり翻訳の理念、原理、技法がエッセイで説き明かされる翻訳論の白眉。本邦初訳。
1945年、敗戦とともに崩壊した「大日本帝国」の植民地主義。38度線以北の故郷を喪失した少年は、「異邦人=在日日本人」として祖国へ帰還し、のちに「戦後文学の鬼才」として特異な作品を書き続けることになるーー。
読み/書くことの「自由」を体現し、日本/文学と生涯にわたり格闘し続けた小説家・後藤明生。彼は、一体どのような問題に囚われていたのか? 現代の日本語小説に最大の理論的影響を与えた作家の「方法」の由来と全体像を、ポストコロニアルの文脈から読み解く、後藤明生に関する初の長篇評論。
【目次】
序章 私という喜劇――後藤明生の「小説」
第一部 『挾み撃ち』の夢――〈初期〉
第一章 「異邦人」の帰還――初期短篇1
第二章 ガリバーの「格闘」――初期短篇2
第三章 「引揚者」の戦後――『挾み撃ち』の夢1
第四章 「夢」の話法――『挾み撃ち』の夢2
第二部 失われた朝鮮の父――〈中期〉
第五章 故郷喪失者 たちの再会――『思い川』その他と「厄介な問題」について
第六章 引揚者の傷痕――引揚げ三部作1『夢かたり』
第七章 それぞれの家/郷 ――引揚げ三部作2および『使者連作』
第八章 「わたし」から「小説」へ――一九七九年・朝倉連作と『吉野大夫』
第三部 混血=分裂の近代日本――〈後期〉
第九章 分裂する日本近代と「転向」――『壁の中』
第十章 メタテクストの方法――八〇年代1
第十一章 戦・死・墓――後藤明生の〝戦争文学〟――八〇年代2
第十二章 日本(文学)を分裂させる――九〇年代
終章 自由と呪縛――引揚者という方法
honn
単調で、複雑な意味の表現をしていないにもかかわらず、なぜ芸術的感銘を与えるのか――
『言語にとって美とはなにか』以来の素朴な疑問を携え、短歌表現の魅力に迫る歌人論。
「ぼくは短歌に執着している、
つくらないけれども、
読むことに執着している。」
収録歌人論(生年・収録順)
長塚 節
斎藤茂吉
石川啄木 【啄】は正字
折口信夫
前川佐美雄
近藤芳美
江口きち
塚本邦雄 【塚】と【邦】は正字
村上一郎
前登志夫
岡井 隆
寺山修司
佐佐木幸綱
辺見じゅん
岸上大作
福島泰樹
俵 万智
パンデミックはファシズムへのショートカットである。仕掛けられた因果の連鎖に回収されてはならない。
終わりの見えない「危機」の最中で、文学の言葉が果たすべきこととは何かーー世界は詩である」という確信から「無血な力」を言葉に呼び込み、イデオロギー言説を迎撃する、抵抗主体としてのクリティークの記録。(主に2020年以降発表の作品を収録)
対談:野村喜和夫/藤原安紀子/宇野邦一
なぜ寺山修司は、基地の町の中学教師に、75通もの手紙を書き送ったのか。
病床にあった〈才能〉を、物心ともに支えた女性の戦中戦後。
町の歴史をたどりながら記す、二人の交感。
「僕」はいま同時に二つの場所にいる――
地下鉄サリン事件を起こした麻原彰晃へ、小説家としての「負い目」を感じる村上春樹―。
『アンダーグラウンド』以降、どのようにこれを払拭するのか?
『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』をメタファー物語論で読み解き、村上春樹の新たな挑戦と試みを差し出す画期的な論考。