二匹のけだもの/なけなしの財産 他五篇

東欧ユダヤ文化の「生き証人」としてポグロム(虐殺)と亡命の記憶を活写した、ドヴィド・ベルゲルソン。
「隠遁者」の筆名でスターリニズムのテロルを予感させる幻想的な作品を発表した、デル・ニステル。
スターリン時代に粛清されたイディッシュ文学の代表作家二人の傑作短編集。

ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集

【在庫僅少・重版中2月末でき予定】
ポリドリ『ヴァンパイア』ブームのさなか、1820~30年代にかけて発表された、ラウパッハ『死者を起こすなかれ』、シュピンドラー『ヴァンパイアの花嫁』など怪縁が織りなすドイツ・ヴァンパイア文学傑作短編集。本邦初訳。ヴァンパイア学者が詳述する訳者解題「ヴァンパイア文学のネットワーク」を併録。

ガリバー

『フランドルへの道』『ファルサロスの戦い』『農耕詩』など、前衛的、実験的小説作品を発表した〈ヌーヴォー・ロマン〉の代表作家クロード・シモン――シモン独自の書法で紡がれた、第二次大戦末期の、とある日曜日の出来事の〈居場所のなさ〉をめぐる初期の長編小説。本邦初訳。

戦争

20世紀のスキャンダル作家セリーヌの死後60年の時を経て発見され、「21世紀の文学史的事件」と国内外で話題を呼んだ幻の草稿群のひとつ、『戦争』――『夜の果てへの旅』に続いて執筆された未発表作品にして、第一次大戦下の剥き出しの生を錯乱の文体で描き出した自伝的戦争小説が本邦初訳で登場!https://www.genki-shobou.co.jp/wp-admin/upload.php

ドイツの歌姫 他五篇

森鷗外『舞姫』を彷彿させる、ドイツ留学したエリート医学生の西欧との出逢い、東欧との疎隔とその葛藤を描く自叙伝的作品『ドイツの歌姫』。古き良き民衆を大らかな共感と深い洞察で活写し、19世紀セルビアのリアリズム文学を確立したラザーレヴィチの中短編6篇を収録。本邦初訳。

稜線の路

人間に潜む根源的欺瞞を暴き出し、非現実を現実に変えてしまう秩序転倒の現代を告発し、在るべき世界秩序を啓示する――『形而上学日記』の哲学者・劇作家ガブリエル・マルセルの哲学思想を先導する〈筋書きの無い演劇〉にして、マルセル戯曲作品の頂点を極めた全四幕の悲劇。本邦初訳。

シラー戯曲傑作選 ドン・カルロス スペインの王子

「太陽の沈まぬ国」と謳われたフェリペ二世治下の盛期スペイン。王妃への秘密の恋に悩む王子ドン・カルロス、自由の国家の実現を目指すポーザ侯爵に、陰謀と策略をめぐらす宮廷の人々を交えて、友情劇、恋愛劇、政治劇が繰り広げられる。前期シラーの自由概念の到達点となった、全五幕の長大な歴史悲劇。

息子が母親に恋する。世間のしきたりが、
自然の秩序が、ローマの法律が
この恋を弾劾するだろう。僕の望むものは
父上の当然の権利と真っ向から対立する。
わかっているが、それでも好きなのだ。

シラー戯曲傑作選 メアリー・ステュアート

16世紀のスコットランド女王メアリーの生涯の〈最後の三日間〉を舞台に、カトリック対プロテスタントの宗教・政治的対立を描いて波紋を呼んだシラーの歴史劇。メアリーの「精神的自由」という理念のドラマを、古典主義規範によって理性と感性の調和として厳密に構成した、全五幕の傑作悲劇。

儚いこの世と無窮のあの世が入れかわるときには、
その変化は、一度にして、瞬きする間もないほど素早く、
生じるよりほかないものなのです。
奥方さまも、神さまのおかげをもちまして、
あの一瞬にして、毅然たるご態度で、この世での希望を退け、
信仰にあふれるその御手で、天国をつかまれたのです。

モン=オリオル

レジャーと治療、自然のスペクタクル、社交と娯楽、投機と事業、源泉所有権をめぐる資本所有者たちのたくらみと諍い、恋愛と姦通――温泉リゾート「モン゠オリオル」を舞台に種々様々な人間たちの「感情」が絡み合う、モーパッサンが描く一大〈人間喜劇〉。

訳者解題の一部をnoteで公開しています。

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乾杯、神さま

メキシコ革命を兵士として生きた後、労働者として、変動するメキシコシティの地を這って生きるヘスサという女性は何者か――ジャーナリストの経験を活かし、一個人の証言を多声的な〈女性〉の物語へと昇華させた、セルバンテス賞受賞の女性作家によるルポルタージュ文学の傑作長編。本邦初訳。


ポニアトウスカ『乾杯、神さま』の本文で、脱字等の誤植がありました。

p.203・上段・5行目
(誤)
わたしは一気に女たちに(改行)
し立てた。

(正)
わたしは一気に女たちに捲し立てた。

ここに訂正してお詫びいたします。

本書訳者解題の一部はnoteで公開しています。

昼と夜 絶対の愛

アポリネール、ブルトン、レーモン・クノー、イヨネスコ、ボリス・ヴィアンら20世紀フランスの前衛作家たちに多大な影響を与えた、不条理の作家アルフレッド・ジャリ――兵役体験における生と存在を夢幻的に描く『昼と夜』、催眠術によって新しい世界を創造しようとする『絶対の愛』の小説2篇を収録。

シャーンドル・マーチャーシュ 地中海の冒険  〈上・下〉

ハンガリー独立運動の道半ばにして斃れた仲間たちから「裁き」の使命を託されたシャーンドル・マーチャーシュ伯爵。果たして彼は、奸智に長けた仇敵たちを捕らえることができるのか? 
悪党どもに正義の鉄槌を下さんとして、神出鬼没の謎多き医師アンテキルト博士とその仲間たちが地中海を舞台に躍動する。
『海底二万里』『八十日間世界一周』を凌駕し、ジュール・ヴェルヌの小説シリーズ〈驚異の旅〉の中でも最大級のスケールを誇る、狂瀾怒濤の海洋冒険物語。上巻は、全五部のうち第三部第四章までを収録。下巻は、第三部第五章から第五部最終章までを収録。エッツェル版挿絵全点を掲載した新訳決定版。

恋の霊 ある気質の描写

斬新な構成、独特な心理描写で、彫刻家である主人公の、三代にわたる女性への愛情が赤裸に描かれる――唯美主義、ダーウィニズムの思想を取り込み、〈性愛と芸術〉の関係を探究し続けた英国ヴィクトリア朝の詩人・小説家トマス・ハーディが最後に著したロマンス・ファンタジー。

聖ヒエロニュムスの加護のもとに

ジョイス、ホイットマン、バトラーら英米文学から中南米文学、伊文学まで〈世界文学の仲介者〉として多言語の文芸を翻訳したコスモポリタン作家ヴァレリー・ラルボー──聖ヒエロニュムスの論考を筆頭に、500余名の文人をめぐり翻訳の理念、原理、技法がエッセイで説き明かされる翻訳論の白眉。本邦初訳。

ピェール 黙示録よりも深く(上・下)

理想と現実に引き裂かれる曖昧なる人間の愚かさを見つめ、キリスト教社会の欺瞞、西欧社会の偽善を炙り出す――『白鯨』の著者メルヴィルが世界の破滅絵図【ピクチュアレスク】として描いた大長編の問題作。

半神たちが屑を踏みつけている。「美徳」と「悪徳」も屑なのだ! イザベル、ぼくはそういったことを書くつもりだ――そしてぼくは、この世界にあらためて新しい福音を説き、『黙示録』よりも深い神秘を示してやる!――そういうものをこそぼくは書く! いや書いてみせる!

全26書のうち、上巻には、イザベル登場によりピェールの反逆の人生の火蓋が切られる〈第12の書〉までを、下巻には、故郷からの旅立ち、作家への道と破天荒な人生行路が待ち受ける〈第13の書〉からを261収録。

【お詫び】カバー袖の著者生没年の誤りについて
上・下巻とも
【誤】1777-1843
【正】1819-1891
1刷での誤りです。2刷以降修正いたします。訂正し、お詫び申し上げます。

ストロング・ポイズン

アガサ・クリスティらと、1920~30年代の〈探偵小説の黄金期〉を牽引した女性作家ドロシー・L・セイヤーズ――探偵らしさと男らしさの狭間で存在の不安に揺れ動く男性探偵の危うさに焦点を当てた、〈ピーター・ウィムジィ卿〉シリーズの重要な転換期となる奇妙な探偵小説。

個人的な感情が調査に影響したことはこれまでにもあったが、それが彼の知性を曇らせたことはなかった。彼は手探りをしていた――自分のことをあざ笑いながらあちこち逃げていく可能性を摑むために。出鱈目に質問しては目的を見失い、かつては刺激的だった時間の足らなさはいまでは彼を怯えさせ、混乱させてもいた。

三つの物語

ナポレオンとの政治的対立から追放されながら、個人の自由と寛容を重んじ、政治的リベラリズムを貫き通したスタール夫人――奴隷制度廃止宣言の翌年に刊行された、三角貿易の拠点セネガル、アンティル諸島、ル・アーヴルを舞台にした三人のヒロインたちによる「愛と死」の理想を描く中編小説集。本邦初訳。

目次
1795年の序文
三つの物語
 ミルザ、あるいは、ある菱光社の手紙
アデライードとテオドール
ポーリーヌの物語

スタール夫人年譜
訳者解題

原タイトル:Trois Nouvelles

訳者解題の一節は note で公開しています。

詩人の訪れ 他三篇

土地固有のかたちとフランス語の多様性を追求し続けたスイス・ロマンドの国民作家C・F・ラミュ──ラヴォー地域の村落を理想郷として描く詩的小説の表題作、故郷の地勢から発する文学を決意した「存在理由」、「手本としてのセザンヌ」「ベルナール・グラッセへの手紙」を収録。本邦初訳。

みつばちの平和 他一篇

20世紀スイスロマンド文学を代表する女性作家アリス・リヴァ――告白体の軽快な「女性の文体」で〈女の生〉を赤裸々に綴った、時代に先駆けたフェミニズム小説の表題作と、名もなき者たちの沈黙に言葉を与える詩的散文『残された日々を指折り数えよ』の2篇を収録。本邦初訳。

魔法の指輪 ある騎士物語(上・下)

『ウンディーネ――水の妖精』の詩人が書いた大ベストセラー小説が、210年の時を超えて蘇る!――『指輪物語』『ナルニア国物語』の先駆となった冒険ファンタジー小説の原像。汎ヨーロッパのヴィジョンを夢幻に繰り広げた、力と美の奔出する中世騎士道絵巻。本邦初訳。

上:第1部+第2部第11章まで 384頁
下*第2部第12章から+第3部+著者年譜+解題 496頁