「還って来た者」の言葉

私たちをばらばらに切り離し、再生不可能と思えるほどの孤立をもたらしつつあるコロナ禍。その中で、他者との連帯と協調はいかにして可能か。親鸞の「悪人正機説」、吉本隆明の「往相還相」、イエスの「私に触れてはいけない」、村上春樹の「影」――絶望的な危機のさなかで古今の言葉を読み継ぎ、「反動感情」から「配慮」へと希望の隘路を見出す。閉塞的な現在状況に批評家が全力で応えた最新評論集。

【内容】
はじめに

Ⅰ 吉本隆明・親鸞・西行・ヴェイユ
死を普遍的に歌うということ――吉本隆明と立原道造
なぜ「極悪人」に「救い」があるのか――吉本隆明『最後の親鸞』』を読みながら
「還ってきた者」の言葉
「パラドックス」としての〈共生〉
竹の葉先のかすかな震え
西行の歌の心とは何か――工藤正廣『郷愁 みちのくの西行』
なぜいま絶対非戦論が問題とされなければならないのか――吉本隆明『甦えるヴェイユ』について

Ⅱ 加藤典洋・村上春樹
「ただの戦争放棄」と「特別な戦争放棄」――加藤典洋の戦後観と『9条入門』
内面の表象から欲望の肯定へ――加藤典洋の村上春樹評価をめぐって
村上春樹の物語の後に
回生の言葉――江田浩司『重吉』
理由なき死――松山愼介評論集

Ⅲ 大澤真幸・ジジェク・アガンベン・カツェネルソン
コロナ禍のなかでいかに生きるか
負け損をする人々への配慮

証言――あとがきに代えて
覚書

終わりなき漱石

生成、深化、そして再帰へ。 著者がデビュー以来長年書き継いできた『夏目漱石論―序説』(1980)、『「それから」から「明暗」へ』(1982)、『夏目漱石は思想家である』(2007)、『漱石の俳句・漢詩』(2011)の四冊をベースに、新たに一貫したモティーフのもと漱石作品を読み直し、大幅改稿のうえ論じ直した、神山漱石論の現時点での集大成となる超大作(全1056頁)。 小説のみならず、俳句・漢詩さらに『文学論』も含めた、夏目漱石の文学と思想――その全体像を読み解く試み。

[目次]
はじめに
第一部 生成する漱石
第二部 深化しゆく小説
第三部 思想としての漱石
第四部 再帰する『文学論』
第五部 詩人漱石の展開 俳句・漢詩
略伝
略年譜
あとがき

本書の「はじめに」をnoteで公開しています。

日本国憲法と本土決戦

共苦(コンパッション)と憐憫(ピティ)。災害後の社会を覆う「反動感情」を撃つ。 巻末に遠藤周作『沈黙』をめぐる若松英輔との対談を収録 本書「はじめに」をnoteで公開しています。